「どうせまた、CGの水しぶきと筋肉質な男が家族を救うだけの映画でしょ?」
そう思ってNetflixを開いたあなたの指を、私は今すぐ止めたい。そして、その指で再生ボタンを押し、開始30分後に訪れる「裏切りの快感」に打ち震えてほしい。
今話題の新作『大洪水』は、ただのディザスタームービーではない。「水没したマンション」という閉鎖空間で描かれるのは、生存本能ではなく、もっとグロテスクで美しい「愛の演算」だった。
溺れるのは「体」か「理性」か
世界が終わる日に、なぜこの二人が?
2025年の暮れ、我々のTLを占拠したのは「南極に小惑星衝突」というありふれた終末設定ではない。キム・ダミ(『梨泰院クラス』)× パク・ヘス(『イカゲーム』)という、演技の怪物がタッグを組んだことへの期待と恐怖だ。
世界中が水没していく中、彼らが閉じ込められたのは古びたマンションの一室。この「密室劇」を選んだ時点で、制作陣の狂気を感じる。派手な破壊で誤魔化せない。逃げ場のない水の中で、剥き出しの感情だけをぶつけ合う。これはもう、映画というより「演技の格闘技」だ。
ジャンル詐欺にも程がある(褒めてる)
ここからが本題だ(ネタバレギリギリで寸止めするから安心してほしい)。 「水が迫ってくる! 逃げろ!」というパニック映画の皮を被っているが、中身はSF哲学である。
特に議論を呼んでいるのが、劇中に散りばめられた「21499」という数字と、後半の展開だ。 ただのサバイバルだと思っていた観客は、突如として「人間とは何か?」「母性とはプログラム可能なのか?」という問いを突きつけられる。水没しているのは物理的な地球なのか、それとも「誰かのシミュレーションの中」なのか? 観終わった後、あなたは自宅の窓の外を見て「この世界は現実か?」と疑うことになるだろう。この映画、湿度がすごいのに、見終わった後の肌触りはドライで無機質。そのギャップが最高に気持ち良い。
キム・ダミに何させてんだ

それにしても、キム・ダミ演じるアンナの境遇が過酷すぎる。「子供を守る」という一点だけで、物理的にも精神的にもボロボロにされる姿は、見ていて痛々しいほどだ。 「誰か彼女に酸素と温かいスープをあげてくれ!」と叫びたくなるが、その極限状態で見せる彼女の「爬虫類のような冷たい視線」と「燃えるような母性」の同居には、鳥肌が立つ。 そしてパク・ヘス。相変わらず「いい人なのかサイコパスなのか、字幕が出るまで分からない顔」が天才的だ。彼が手を差し伸べるたびに、「その手は救助か、それとも実験の続きか?」と勘ぐってしまう。我々は完全に、監督の手のひら(あるいは水槽)の中で転がされているのだ。
今日は暇だなやる事ないなと思ったら、ぜひ見てみてはいかがだろうか。
